これこそトリップの醍醐味ってか?





*予想外の訪問者*













「深く深くぅ〜〜〜〜♪ふふふふんふん♪ふふふふ〜ん♪(歌詞知らない)」



はご機嫌だった。



「やっと仕事させて貰えるようになったなぁ。耳にちゅーなんて事件も水に流しちゃうっ!」


は今、洗濯物を庭に干しているところだ。
あれから馬超は本当に香蘭さんに頼んでおいてくれたようで、
少しずつであるが、彼女がに仕事を教えてくれるようになっていた。
と言っても、まだまだ慣れないは失敗ばかりしているのだが、
それでもめげずに仕事を続けるに香蘭は何も言わずニッコリと見守っていてくれている。


「ふぅ、今日のお仕事完了!」


は盛大に伸びをすると、空を見上げた。
庭に生えている木の名前も解らない白い花が、真っ青な空に良くはえる。



「すみません。」

「うん、いい天気だし、すぐに乾くかな!」

「すみません!」

「さて、今日は何をしよ」
「すみません!!!!」

「うぇ!?」

吃驚した。
あまりに爽やかな気分だったからかどうかは解らないが、
気がつかないうちに隣に人が立っていて、私に話しかけていたのだ。
急いでそちらに身体ごと向けなおす
立っていたのは、少し困った顔をしたポニーテールな青年だった。



・・・・・え、ポニーテール!?



「すみません、お仕事中に。馬超殿はいらっしゃいますか?」

ポニーテールの青年は、やっと反応が返ってきたことに安心した後、すぐに質問を投げかけてきた。



もしかして。もしかしちゃう?


「いえ・・・。あの、失礼ですが、もしかして姜維さん・・・でしょうか?」

「え?あ、はい。申し訳ございません、名乗っていなくて。
最近此方にお邪魔することが多いので、私の顔を認識していらっしゃる方が
多かったので忘れていました。新人の方ですか?私は姜伯約と申します。」





ほん・・・もの・・・・!!





「あ、あのっ、いいえ、ご丁寧にすみません!えーと、私はといいます。
最近此方に来たばかりなので、すみません。」


は大層混乱していた。
だって、姜維だ。あの姜維だ。
無双で二番目くらいに好きなキャラだ!!(一番は呉の彼)
ちょっ!どうしよう私!!!!


「あの、それで馬超殿いらっしゃいますか?」


混乱しているに少し首をかしげた姜維だったが、質問の答えを急かす。


「あ、そうでした。馬超さんは、今日はお城でお仕事なのでお留守ですよ。」

「そうですか!どうやら入れ違いになったようですね。」


私、今お城から馬超殿を呼びに来たんです。と彼は付け足した。




「あれ?でも、姜維さん。玄関からでなく、何でこんな庭までいらっしゃったんですか?」


よく考えればおかしな話。
が居るのは玄関とは違う方向にある庭だ。


「それが、玄関で呼んでも誰もいらっしゃらなかったので。
大変失礼かと思いましたが、誰かいないかと勝手に探しに参ったのです。」

「そういえば香蘭さんもお留守だ・・・。すみません!
お客さんがいらっしゃったことに誰も気がつかなかったみたいで!」


はぺこぺこと頭を下げた。


「いいえ!いいのですよ!それより、馬超殿はお城ですか。
私が来た意味なくなっちゃいましたね。呼びに来るまでもなかったようです。」


姜維はくすくすと笑ってに頭を上げさせる。


「今日は馬超殿を呼びに来て仕事終了だったので、久しぶりに暇なんです。
馬超殿はいませんが・・・此処の庭の花が綺麗ですから、お花見でもしていきましょうかね。」


姜維は白い花の咲いた木を眺めてニッコリと笑った。
その顔を直視してしまったはたまったものではない。
身体全体の熱が顔に集まるのを感じた。


「あ、じゃ、じゃぁ何かつまむものと座れる物持ってきます!!」


はその顔を隠すように、邸の中に走っていったのだった。


「・・・半分は冗談だったのにな。」


この呟きはに届くはずもなく、
姜維は慌てる可愛らしい少女を思い出してくすくすと笑うのだった。










「え、じゃぁ、馬超さんお仕事サボってたんですか!?」


はびっくりして身を乗り出す。
が邸から持ってきたのは、机とイスとちょっとした食べるもの。
それをちょいちょいつまみながら二人は喋っているのだが、
もう随分と打ち解けたようである。


「はい、それで早く城へ来るように、と丞相から言伝を頼まれましてこちらに来たんですよ。」

「今度からはちゃんと言っておきますね!もう、まったく。」


サボっていた理由が、「と一緒にいたい」や「日本探し」
だということを知らないは憤慨した。





「ふふ、お願いしますね。ところで、殿は先ほど、
違う国からいらっしゃったと仰っていましたが、どちらの国なんですか?」


姜維は何気なしに聞いたのだが、は少し戸惑った。


「(・・・馬超さんにも言ったし、どうせ探してもない国なんだし、言っていいよね?)
日本って言う国なんですけど。」

「日本・・・聞いたことがないですね。殿は何故こちらに?」

「え?あー・・・成り行きって言いますか・・・。少し馬超さんに助けて頂いて・・・・」


ここではピンときた。
そうだ、恩返し。
今まで散々考えてもいい案が出なかったのだが、
この時代と馬超についてよく知っている姜維に聞けば何かアドバイスをくれるのではないか?



「そう、それで、助けて頂いた恩返しがしたくて此方にとどまっているのですが、
姜維さん、いきなりなんですが、何か良い恩返しの方法ないですかね!?」


これには少しびっくりした姜維だが、心優しい彼だ。
そうですね・・・と一緒に考えてくれた。


「これはまた難しいですね・・・男性の方なら、そのままその人に仕える方も多いのですが。」


姜維はうーんと唸って眉を寄せた。


「一応働かせてもらってはいるのですが、居候させてもらっているのでそれ
でチャラになっちゃうと思うんですよ。残念ながら、お金もないですし。」

「何か気持ちがこもっているといいのですが・・・
殿の国ならではの事とか、特技を生かすとか・・・。」

「特技・・・ですか?」


特技と言えば、絵を描いたり物を作ったりすることだろうか。
しかし、紙が貴重な時代だ。絵だってそんな大したものは描けまい。
舞などができれば良いのだが、それも無理だろう。
でも、良いアドバイスを貰ったかもしれない。




「ありがとうございます。参考になりました!」

「いえ、こんなことしか言えず、すみません。また考えておきますね。」


そう言って姜維は立ち上がる。


「今日はいきなりのお花見、付き合ってくださってありがとうございました。楽しかったですよ。」


姜維はニッコリ笑って言った。


「はい、私も楽しかったです!!えへ、今日庭でお仕事してて良かったな。」

「また、時間があったら来ますね。・・・・今度はに会いに。
それまでにまた、恩返しの事も考えておきますね!」


そう言って少し頬を染めた姜維は、そうやって見るとまだまだ少年のようだ。
もつられて顔を赤く染めたが、笑って「待ってます。」と言った。
・・・なんだか青春ラブストーリーのようだ。初々しい。


「では、また。」


そう言って馬に乗って駆けて行く姜維の後姿を見送ったは、
少し嬉しそうに一人微笑むのであった。














「何だ、姜維。良いことでもあったのか?」

「ご機嫌だな。」

その後城に戻った姜維も、何も知らない趙雲と馬超からそう言われるほど始終笑顔だったそうな。











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でました。
生姜の彼が出ました。
私的にもうちょっと可愛い姜維が好きなんだけどな・・・何故?
何だか礼儀正しくてしっかりしている感が;
うぅ、馬岱さんとかぶっちゃう。



はじめ、主人公ちゃんが歌っているのは再臨の歌です。




08.04.15