それで、起きたら知らない所。





*これからの不安*










「まぁ、そんな感じに、家の前に馬がいてですね。
その馬に乗っているうちに気絶した様で・・・・・気がついたら此方に・・・。」


は困ったように笑った。
いや、笑ったのではなく、頬が引きつっただけかもしれない。
どちらにせよ、は此方に来た経緯を二人に話して聞かせた。
何だか凄く間抜けな話だけれど、本当のことなのだから仕方が無い。


「馬でいらしたってことは、殿の家はそう離れてないかもしれませんね。」


馬岱は少し嬉しそうに言った。


「変な体制で乗っていたのは無理やり乗せられた訳でも何でもないんだな。
ところでお前、変わった服を着ていたが、家はどこなんだ?」

「服?」


はここで始めて気がついた。
自分は出かける際着ていた服を着ていない。
着物の様に前で合わせる服を着ていたのだ。
まだ体が本調子ではないにしろ、鈍すぎではないか。


「すみません。殿が着ていらっしゃった服は今乾かしていますので。」


ご丁寧にさわやか青年が教えてくれるが、が気にしているのはそこではなかった。
・・・誰が着替えさせたか、でもない。
が気になったのは、目の前に座る、青年二人が来ている服だった。
それは、まるで現代のものではない。
確かに、部屋全体が古風でおかしいなとは思ったが、
お金持ちの家で、少し中華にこっているのだろうとしか考えなかった。
しかし、服まで。
それに、この「ばたい」と「ばちょう」
それに金髪モデルときた。
薄々「おかしいな」、と思っていたのが、
段々「かなりおかしい」と思うようになってきた。


「あの・・・・」

「何だ?家も解らんか?」


は何だか嫌な予感がした。
確かに、今までこんな事を妄想したことはあった。
・・・有ったが。


「いえ、質問に質問を返して申し訳ないのですが・・・・・此処の国の名前は何といいますか?」


そう、の思考が辿り着いた先は。





「蜀だが?」



















ビンゴだ。


ビンゴだった。



どうしよう。








「蜀」

その言葉を聞いてはひどく混乱した。
混乱したせいか、はたまた只の偶然か。
あの後直ぐに、本調子ではなかった喉がまた暴れだし、
咳が止まらなくなり、軽く呼吸困難に陥ってしまったのだった。
もちろんそのお蔭で、がどこから来たか、の話はお流れとなってしまったのだが。












起きたらそこは、三国時代でした。

なぁんて、夢みたいな話。






でも。
ドッキリにしては手がこんでいるし。
気を失う前に現れた馬も不可思議だ。
しかも、彼の髪色を見るに此処は・・・・・・・もしかして無双?





















「落ち着かれましたか?」


はこくこくとうなずく。
まだ声を出そうとすると、咳き込むのだ。

咳が収まった時には、もう辺りは真っ暗だった。
馬岱はの枕元の机に女中さんらしき人から貰った水を置くと、彼女の頭をなでた。


「もう今日も遅いですし、お休みになった方がいいですね。」


いつの間に部屋にいたのか、はたまたずっといたのか。
きっと馬家に仕えているであろう女中さんが部屋の明かりを灯してくれた。
薄暗い部屋にぽっと黄色い光が入る。


「では、私が様の傍に居ます故、お二方もお休みになってください。」


女官さんはそう言ったので馬岱さんは「お願いします」と言って椅子から立ち上がった。


「さ、従兄上も「いい。俺が此処にいる。」

「え?」


馬岱に即されたが、馬超はそのままイスに腰掛けたままだった。



「俺がこいつの傍にいる。香蘭も二晩看病したんだ。疲れているだろう。」

「しかし、馬超様。」

「いい。俺が好きでやることだ。気にするな。」


馬超はニッと笑って、手を「あっち行け」とでも言う様に振った。
馬岱と香蘭と呼ばれた女中も肩をすくめたが、こういうことは多いのだろうか。
慣れたふうに部屋から出て行った。









「ば、ちょさん」

かくゆうも、いきなりの展開と初めて見た馬超の優しい顔に少し戸惑った。


「気にするな。それよりも早く身体を治せ。お前の詳しい話はそれから聞く。」

「でも・・・コホッ」

「もう喋るな。寝ろ。」


も咳き込んだせいで疲れ果てていたので、素直にそれに従った。
色々有りすぎて。今夜は一人でなくて、馬超さんが傍にいてくれて良かったかもしれない。



「おやすみ、。」



初めて呼ばれた名前が嬉しかったのか、それともおやすみの言葉が家族と重なったのか。
無償に胸が締め付けられてしまい。
は馬超に背を向け、涙を流しながら眠りについた。





















と言ったこの女。
いや、女というよりはまだ少女、か。


この乱世だ。
はじめは敵国の間者や暗殺者か何かかもしれないと警戒していた。


しかし、初めて俺の前に現れた時は本当に気を失っていたし。
持ち物は何だかよくわからない、柔らかい板(手帳)だけだった。
目や纏っている雰囲気もそういった類のものではなかった。


それに。

王蒼が連れてきた。

あいつは気位の高い馬だった。

悪い奴を乗せやしない。






そういえば、夜、彼女は泣いていた。
こちらに背を向けていたが、肩が小刻みに震えていた。
まだどこから来たのかさえ聞けていない。
わかっているのは名前だけ。

それなのに。

笑った顔が早く見たいのは何故だろう。










BACKmenuNEXT


うわんw
馬超の性格が解りません!

ついでに、三国時代の家や服も解りません。
・・・・すいまっせん!




08.04.15