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―――「・・・・・・・・さよなら・・・・です、ね。」―――
*焦る想い*
が崖から落ちて少しした頃のこと。
馬超は日が落ちていく中、一人栗毛の馬に乗ってを探していた。
探すアテなど、ない。
馬を走らせる度に雨上がりの地面は、泥や水しぶきを跳ねさせた。
辺りはみるみるオレンジ色から紫色へと変わっていく。
それが、さらに馬超を焦らせた。
「どこに、行ったんだ。」
もう彼女は自分の世界へ帰ってしまった。
そんな考えが浮かんでは頭を振る。
まだ、
まだだ。
諦めるわけにはいかない。
諦められるはずがない。
もう、これ以上大事なものをなくしてなるものか。
広い草原を駆けていた馬超は自身の馬の手綱を操り、
今度は東に向けて駆ける。
ここからそう遠くはない。
目指すは、彼らの初めての出会いの場所・・・・。
雨宿りをしていた、大木の下。
心当たりはそこしかなかった。
との思い出があまりに少なすぎた。
どうか、今度こそいてくれ。
馬超は歯をぎりっと食い縛った。
もう空には赤色はなく。
明るさがなくなる前。
「くそっ!此処にもいない!」
最後の願いも哀しく。
大木の下に見慣れた姿はなかった。
「どこに、行った。」
馬超は馬から降りて木に寄りかかった。
「帰ってきてくれ・・・。」
栗毛の馬が馬超を気遣うように覗きこむが、彼とは目が合うことはなかった。
馬鹿だ。
何故、俺はあんなことを言ってしまった。
何故、すぐにあいつの話を聞いてやらなかった。
最後のあいつの言葉は、
消えてなくなってしまいそうなくらい、か細かったというのに。
もしかしたら、あいつは元の世界へ戻って幸せになるかもしれない。
ここにいるより幸せかもしれない。
しかし、それでもあいつを帰したくない自分がいる。
いなくなってしまってから気がつくなんて・・・・
馬鹿だ。
「――――・・・・様!―――馬超様!」
「・・・?」
木にもたれかかったままの馬超の耳に、聞きなれぬ声が聞こえた気がした。
それは、子供のような声。遠くの方から聞こえてくる。
馬超は不思議に思い顔を上げた。
「馬超様!!」
もう一度、聞こえた。それはだんだん近づいてきている。
・・・向こうの方から、黒い何かが、近づいてきている。
心臓が跳ねた。
まさか。
「・・・王蒼!?」
それはすぐに距離を縮め、馬超の隣にて急ブレーキをかけた。
黒い身体、青い目の。
今まで捜し求めていたものの一つである、王蒼だった。
「王蒼!?何で此処に?」
馬超はすぐさま王蒼に駆け寄ったが、背中には探している彼女はいなかった。
「は「ちゃんが崖から落ちた!」
「・・・・・・・・。」
「・・・!?」
馬が、王蒼が、
喋った?
先ほど聞こえた子供のような声で。
一時放心していた馬超はハッと我に返った。
間違いなく、王蒼が喋った。
その様子は非常に奇妙で、誰かが馬の口に合わせて喋っているかのようだ。
しかし、ここにいるのは自分と王蒼だけで。
キョロキョロと周りを見渡しても他の誰もいない。
「・・・王蒼お前・・・喋れ・・・・・!いや、今はどうだっていい。乗せてくれ」
しばし呆気に取られた馬超だったが、その聞こえた声よりも、
もっと重要なことがあったことに気がついた。
「が崖から落ちた」王蒼が喋ったという事実よりも、その内容が気になった。
何故、王蒼が喋るのかは、この際後回しだ。
馬超はぐっと前を見据えた。
がまだこの世界にいるという嬉しさと、
命が危ないかもしれないという恐怖に頭がおかしくなりそうだ。
馬超は颯爽と王蒼に飛び乗り、の場所へと駆け出した。
後ろから、栗毛の馬も着いていく。
目指すは、鼻先に見える、森の、崖の下。
どうか、無事でいてくれ・・・!
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改行ばっかで話短めですみません;
キリがいいのでここまでで・・・。
今回は馬超サイドです。
探し回ってます。
やっと出たけどカラミ無しな馬超さんww
次は・・・どうでしょうね。
ところで、主人公さんが崖から落ちるときに聞いた子供の声は・・・
そう、王蒼くんでした。
馬が喋ってます。奇妙です(笑)
色々設定がややこしくってすみません!!!
さて、次回は決断ですね。
難産になりそう;
・・・というか、あと2、3話で最終回ですよ!!!!!
なんか寂しいですね・・・。
08.10.21