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「判断は諸葛亮殿にまかせる。」

「よろしいのですか?」






*浅はかな考え*







「う、度々すみません。」

「いえ、緊張がとけたようで、何よりです。」


とりあえず、は落ち着きと・・・緊張も一緒に取り戻し、
二人揃って湯呑をすすった。
飲み物はお茶ではなくて水だったが、とても美味しかった。











「さて、そうですね。何から話しましょうか。」


一息をついた後、諸葛亮さんは話を始めた。


「まず、殿。あなたは聞いたところによりますと、
 馬で馬超殿の前に現れたのですね?そして、その時は気を失っていたと。」

「はい。まぁ、私の記憶は家の前にいた黒馬に乗ってから途切れていて、
 次起きたときは馬超さんの邸だったので、何とも言えないのですが。」


そうだ。
諸葛亮さんに国の事を聞くと言っても、諸葛亮さんは日本の事を絶対に知らない。
(この相談会だって、諸葛亮さん見たさに頷いてしまったものだし。)
どこまで正直に話していいものか、悩みどころだけど・・・。



・・・・。



・・・まぁ、いいか。聞かれた事は正直に話そう。
諸葛亮さんには本当に申し訳ないけど、元々見つからない国だ。
奇想天外な事さえ言わなかったら、
「知らないですね。」というふうに結論づいて終わりになるだろう。
それ以上は探してもらわなくてもいいということを伝えて、終わろう。

それがいい。

「違う世界から来た。」なんて言っても信じてもらえないだろうし、
それに解決方法だって解らないだろう。


・・・張角さん辺りなら信じそうだけど。






はそう心に決めて、諸葛亮の質問に答える。




「失礼、殿の国の名前は何といいましたか?」

「日本、です。」


これは、答えてもいいところ。
は机の下で、くっと手を握り締めた。


「聞いたことがないですね。」


そう、これで終わり。
どうもありがとう、諸葛亮さん。
あとは自分で帰り方を探します。


はふっと身体の力を抜こうとした。
が。



「しかし・・・おかしいですね。」

「え?」


そこで話が終わると思っていたは吃驚して声を出した。
いったい、何がおかしいというのか。


殿は馬でいらっしゃったのですよね?
殿の家から馬超殿の邸の近くまで。
しかも、ちゃんと馬は乗った時と同じ馬のまま。」

「・・・え、えぇ。」


諸葛亮がまっすぐを見てくる。
はだんだんその視線に耐えられなくなってきた。


「私は、馬で移動できる距離で知らない国などないと自分でも思っています。
それに、彼方は気絶して馬に乗っていた。
しかし、日本という国は聞いたことがありません。」

「・・・・!」




そうだ。しまった。
今、私達現代人は便利な乗り物に乗りすぎていて、あまり頭にはないけれど。
馬は動物。馬だって疲れる。
馬で移動できる距離だって決まってくるのだ。
気絶したままで、馬で移動できるくらいの距離なんて、たかが知れている。


「気絶しているうちに誰かに遠くまで運ばれた、ということも無いでしょう。
 私が知らないような遠い国なら目が覚めるか、体力がもたないで死にます。」

「!」


諸葛亮はすっと目を細める。


周りの音は何もなくなって、自分の血液が流れる音しか聞こえなかった。





どうしよう。






彼はの目が泳いだのを見逃さなかった。




「馬超殿が殿を見つけたとき、貴女はすでに気を失っていたと聞きます。
 それに、馬超殿はたまたまその場所に居たそうです。
 つまり、あなたが馬超殿に拾われたのは偶然で、間者などではないことは確かです。」


「・・・はい。」


はもう、うなずくことしか出来なかった。
しかし、間者ではない。そう断言してくれたことには安心した。



「あなたが住んでいたのは日本ではなくて、他の近隣の国か・・・
 というより、そもそも日本が存在していないのか。
 何にしろ、少し矛盾点がありますね。」

「・・・っ!」


しかし、間者ではないと聞いて安心したのもつかの間に、
諸葛亮の言葉には、はっと彼を見た。






住んでいたのは日本であるが・・・。

日本が存在しない。それは確かだ。

・・・確信を、ついてきている。




どうしよう。





どうしよう。







まだ、




まだ追い出さないで・・・!













「さて、いくつか質問をさせていただきましょうか。」

「・・・はい。」


諸葛亮は顔面蒼白な顔をしているを見て、溜息を吐いた。


殿、貴女がもし嘘をついていたとしても、何も咎めませんよ。
 別に悪いことをした訳ではないのですから。だからそんな顔しないでください。」

「・・・。」


それでもの顔は青いままで、諸葛亮は仕方なく、そのまま質問することにした。



「まず、殿は馬に乗って気絶していたと聞きます。
 普通、馬に跨って気絶したならば体は横に倒れ、落馬するはずです。
 しかしあなたは落馬せず、馬に覆いかぶさるように横向けに倒れていたとか。
 それは何故か解りますか?それとも、やはり始めは馬に跨っていて、
 落馬した後に何者かにまた乗せられたのか・・・。」

「いえ、えっと・・・。元々馬には、跨っていなかったんです。」


不思議そうに言う諸葛亮だったが、それを聞き、は顔の色を青から赤に変えた。
そして、言いにくそうにもじもじと目を泳がせる。


「・・・?跨っていなかった・・・と?」


諸葛亮はその返答に眉をよせた。
馬に跨っていなかったとはどういうことだろうか?


「はい。あの、実はその時、馬に乗る・・・それどころか、触るのも初めてでして・・・・。」

「・・・・。」


まだもじもじしているに諸葛亮は無言で続きを迫る。


「う、上手く乗れなくて、その、馬に覆いかぶさるような感じの体制のまま、
馬が出発してしまったのです。
そして、それが怖すぎて気絶してしまったのだと思います・・・。」


はそう言うと「はずかしっ!」と言って顔を手で覆い、盛大に机に突っ伏した。
一方諸葛亮はというと、


「・・・・・・・・・。」


驚いたように目を開いて、固まっている。


「・・・こほん。馬・・・が始めて・・・ですか。」

「はい。」

「つまり、馬超殿が貴女を見つけた時と、貴女が馬に乗った時の体制は、
何ら変わりはないということですね?」

「・・・はい。」


しばし固まっていたが、やっと動き出した諸葛亮は少し眉を寄せて質問を続ける。


「では、馬が始めてということは、その馬はあなたの家のものではなかったのですか?」

「はい。それはそうです。実は、その馬は馬超さんの馬なのです。」

「は?」


諸葛亮はだんだん訳がわからなくなってきてきた。

少女の言う日本は聞いたこともない。
馬に乗れば気絶。馬は初めて。
だからと言って、馬を持っていないような民のようには見えないし
(手だってきれいなものだ)、しっかり教育はされているように見受けられる。
・・・そして、馬はの馬ではなくて、馬超のもの。


「その馬は、10年前に馬超さんの元からふらりと居なくなった
馬なのだそうです。何なら、馬超さんに確認とってください。」

「いえ。しかし、10年前・・・ですか?馬超殿は、よく自分の馬だと解りましたね。」

「はい、その馬の体は真っ黒なのですが、目がすごく青いのです。
その色が印象的で思い出したと馬超さんは言っていましたが・・・。」


そこで、諸葛亮がピクリと反応した。


「青い・・・馬?」

「え?いいえ。青い目の黒馬です。」

「その馬の名は。」

「え?」

「その馬の名前は何といいますか?」

「王蒼ですが。」

「・・・!」







もしかしたら。






諸葛亮の中で何かが繋がった。








「・・・殿、先ほどはあなたが嘘をついていると決め付けたような物言いをしてしまい、
申し訳ございません。考えを改めさせてください。」


諸葛亮は今まで鋭く見つめてきていた目をふっと和らげると、軽く頭を垂れた。


「・・・え?」


いきなり態度を豹変させた諸葛亮に、
には何が起こったのか解る筈もなく、目を丸くするだけだった。
いったい何なんだ。




「しかし、あなたも詫びる所はあるはずです。」


頭を上げた諸葛亮は、先ほどよりも柔らかいが、
それでいてまっすぐな視線をに向ける。









「・・・殿は違う時間・・・いいえ、違う世界から来たのではないですか?」










「え!?」









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諸葛亮さんとの戦い(笑)

・・・ちゃんと伝わっているだろうか・・;すみません、ほんと文章力なくて。

ま、とりあえず、諸葛亮さんが何故ヒロインさんが異世界から来たか解ったのかは、次回で。


凄く書くのが難しかった一話ですね・・・。

08.05.31