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遂に来た。



彼との対面が。







*偉大な彼との御対面*








「すご・・・い・・・・。」

「おい、口開いてるぞ。」


は馬超の隣を歩きながらあちこちを見回していた。
そう、此処は蜀の、劉備様のいるいわゆるお城。
この時代に、こんなに立派なものができるなんて。
現代のつるっとした建物に見飽きていたので、余計に
豪華な飾りが凄く見える。

意外とカラフルな建物に、すれ違うたびに頭を垂れる女官達。
(もちろん馬超に対してだが。)
未来とか過去とか、本当に些細な違いしかないのではないか。
そう思ってしまう。




「あ、従兄上に殿?」


私が口をさらに開けはじめた時に、後ろから声が掛かった。
馬超を従兄上なんて呼ぶ人は一人しかいない。


「馬岱さん!」

「お?お前も来てたのか。」


振り返って見た彼は、いつも邸にいる時とは違い、
髪の毛を後ろで一つに纏めていた。




「岱、こんな所でどうしたんだ?」

「従兄上を探していたんです。」

「あ?俺は今から軍師殿のところへ行くんだが。」

「解っていますよ。でも、従兄。執務があることも覚えていますよね?」


馬超の肩がギクリと揺れた。


殿を諸葛亮殿の部屋へ送り届けた後、逃げないでくださいね?」


黒い。笑顔が黒い。
馬岱さん、普段は爽やか青年なのに、馬超さんに対しては黒いよね。
でも、釘さしとかなきゃ馬超さんは逃げるかも。うん。



・・・て、あれ?チョット待て。



「え、私一人で諸葛亮さんと喋るんですか?馬超さんは?」

「俺も居てやりたいのは山々だが、聞いての通り、仕事だ。」

「申し訳ありません、殿。でも諸葛亮殿ですし、大丈夫ですよ。」



全・然・大丈夫じゃないですよ!!岱さんっ!!



「無理無理無理!!無理だって!!」


は一生懸命首を横にふり、一人では駄目だということをアピールした。
だが、しかし、現実は厳しかった。


「大丈夫ですよ。」

「おら、さっさと行くぞ。」


馬岱には笑顔でゴリ押しされ、馬超に手をつかまれ、
諸葛亮の部屋に向かって歩き出してしまった。
こうなれば逆らえるはずもなく。
手を繋いだトキメキも何も感じないまま、ひっぱられて行くだけだった。


「ぎゃーーーーー!!」


廊下には虚しくの叫び声が響いた。






















「こ、こんにちは。」

「はい、こんにちは。」


目の前には、白い軍師(中身は知らないけど)諸葛亮。
そして今、私は一人。
え?馬超さんと岱さん?
私をここに放り込むなり、「この前言っていた奴だ。」とだけ
一言諸葛亮さんに言ってどこかへ言ってしまった。
いや、声が焦ってたから、多分馬岱さんに連れて行かれたのだけれど。

世紀の軍師に失礼だな、二人とも。





「・・・・・。」

「・・・・・・・・・。」


う、何か間が。


「・・・まぁ、とりあえずお掛けなさい。」


この沈黙をやぶってくれたのは、白軍師・諸葛亮。

流石です、丞相。

とりあえず、言われたとおり、椅子に腰掛け、
机を挟んで諸葛亮さんと向かい合った。


「え・・・・と、と申します。すみません。」


座ったことで、少しは緊張がマシになったのか、は何とか名乗ることができた。
いや、何もないのに謝っている辺り、まだ混乱中である。


「はい、もうご存知かと思いますが、私は諸葛亮と申します。
 今日は殿の国のことについて、だそうですが。
 あまり馬超殿から詳しくは聞いていないのです・・・そうですね。
 私も他の国には興味がありますので、何かと教えていただけると此方も
 相談に乗る甲斐もあるでしょう。宜しくお願いしますね。」

「こ、こちらこそ、お忙しいところ態々時間を取っていただいて有難うございます。
 宜しくお願いします!!」


諸葛亮さんは穏やかに言った。
が、はそれどころではない。
世紀の大軍師を前にガチガチであった。
それには、諸葛亮もくすくすと笑って席を立つ。


「しょ、諸葛亮さん・・・?」


諸葛亮がいきなり席を立った事に焦りを覚える
もう、喋ることなんてありません、何て言われたらどうしよう。


「いえ、すみません。あまりにも殿が緊張なさっているので。
 何か飲むものを用意してきますね。」

「う、え?ええ?ああああ、すみません!!!」


またもや混乱しだすを見て、諸葛亮は自分の弟子が蜀に来て直ぐの頃を思い出し、
少し懐かしく思いながら隣の部屋へ消えていった。






「あわわわ、あの諸葛亮さんに気を使わせてしまった!!」


どうしても慌ててしまう自分に、
は、しっかりせねば。と何回か深呼吸して気持ちを落ち着けた。
どうやら深呼吸の効果はあったようで、やっと部屋の様子を見るまでになった。


「すごい・・・書簡だらけ。」


落ち着いて周りを見渡してみると、想像通り、部屋は書簡でうめつくされており、
少し想像と違ったところは、意外と散らかっているということだ。

やっぱり忙しいんだな。
とシミジミ思いながら、目だけはキョロキョロと忙しく動く。




「あ、羽扇・・・。」


さっき持っていなかったと思ったら、目の前の机に置いてあった。
目の前の机の上に目をやる事さえ出来ないくらい緊張していたのか。

は少し羽の先を触ってみて、それが本物だという事を調べた。
この世界へきて一ヶ月ほどたった今でさえ、まだ実感が湧かないところがある。




うん、本物。




しかし、自分と話し合うときにも使われたら、にやけてしまうかもしれない。
気をつけないと。




は羽扇から目を離し、またキョロキョロとしだした。


「そういえば・・・あの白南瓜の帽子はないのかな。」


さっきの諸葛亮の格好は、馬超と一緒で無双の姿ではない。
髪の毛は簡易に結ってあったが、無双とは違った。
まぁ、普段からあんな凝った姿で居られても困るのだが。
しかし、無双の格好は存在する。
には確信があった。
そう。はこの前、馬超の部屋で見せてもらったのだ。
あの、例の兜を・・・!!!!!
ふっさふさのついた兜から、2の龍兜まで全部だ。
いつかのモデルチェンジの布製の物まであった。
これは、諸葛亮も持っているはずだ。
あの、無双3でかなりの衝撃を与えてくれた白南瓜を!!!


は諸葛亮が居なくなって、かなり自分を落ち着かせることができていたが、
ちょっと緊張感がなくなりすぎていた。







やっぱりこんな所には置いていないかな、なんて思いつつも目で探す。











・・・・って。
左前の棚にある、飾りのごとく飾ってあるアレは。










「白南瓜あったぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「・・・何事ですか。」






が白南瓜を見つけて大絶叫したタイミングと、
諸葛亮が飲み物をもって部屋へ帰ってきたタイミングは、
見事一緒だった・・・。







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基本的に、馬超は岱さんに結構色んな(ヒロイン関係)事を報告してます。
今日は元気が無かったとか。
今日は馬に乗ったとか。
明日は軍師殿に会いに行くだとか。

・・・なんか、一日の出来事をお母さんに報告する息子・・・(笑)




最後はちょっとギャグな感じで^^
次回から丞相と心理戦(違)ですので。
湿っぽい空気も流れるかもしれません。

こっからはどんどこ話が進む・・・・!つもりです。



・・・馬超さんの出番も減っちゃうかも。



08.05.15