・・・・馬?

え?ちょっと、これ、馬??







〜時を駆ける馬〜

*雨の中の再開*












なんて事だ。

軍師殿に小言を言われ、気分を治すために遠乗りに来たというのに。






ビルも電線も人の気配さえもない、まっさらな広野を馬で駆ける男が一人。
城から出た時は気持ちのいい晴天だったのに今は生憎の雨で、空はどんよりと暗い。
しかも悪いことに、段々と雨足が強くなってきている。


男と違い、栗毛の馬はそんな雨すら気落ちがいいかのように、この何も無い広野を一心不乱に走る。
馬の足は泥を跳ね上げ、金か銀か、そんな色素の薄い男の髪からは、ひっきりなしに水が落ちた。

しばらくして男はチッと舌打ちをし、一心不乱に駆けさせていた馬の方向を変え、
広野にぽつんと生えている大きな木の元へと走らせた。






「最悪だ。」


木の下に入り、馬から降りた男はぶるぶると頭を振ると、一人ごちた。


「折角あの堅苦しい部屋から離れられたと思ったのに、運が悪い。」


木の根にどかりと腰を下ろした男は、独り言なのか、
はたまた馬に話しかけているのか、ぶつぶつと文句を言う。

空は灰色で、まだ昼過ぎだというのに薄暗い。
遠くを眺めても、雨でぼやけた草と空しか見えなかった。







「?」


そのまま遠くの方を見つめていた男だったが。
ぼやけた草の緑しか見えなかったその景色に、黒い点が見えることに気がついた。


「何だ、あれは。」


そう言って、男は目を細めた。
その点は少しずつ大きく見えてきて、何かが近づいているようである。






「・・・・・・・・馬?」






どうやらソレは馬だったらしく、ドンドン此方に近づいてきて、
ついに男のいる木の元までやってきた。


真っ黒な馬だ。


「どうしたんだ、お前。一人か?」


男は今度こそ馬に話しかけた。
しかし、馬が答えるはずもなく、その男を見つめ返すだけだった。
黒馬の真っ青な瞳が、男に向けられる。





「・・・・・お前、もしかして・・・・」


男はその馬に何か思い当たる節があるように呟いたが、馬の背中に目をやったとたん、
その考えはいったん停止する事になる。


馬は一人(一頭と言うべきか。)だけではなかった。


黒馬は背中に何か、いや、誰かを乗せていた。
それに、乗せるという言い方にも語弊があるかもしれない。
背中にいる人は、馬にまたがっているのではなく、
まるで布団が干してあるように、だらりと馬に乗せられていたのである。
特に縛られている形跡はない。


「・・・・・。」


このまま放って置くかと一瞬考えたが、さすがに其処まで冷徹人間ではない。
それに、一度も目をそらさずに、自分を見つめ続けるこの黒馬。
こいつにも少し心当たりがあった。




とりあえず、このままいても埒が明かない。

雨も弱くなってきた。



「おい、行くか。・・・・・・・・・・王蒼(オウソウ)。」
























体がダルイ。

ふわふわする。

誰かが。
誰かが隣にいるというのは解るのだけれど。
思うように動かない頭は上手くその人物を映してはくれない。








「・・・・・・ん・・・・う?」

痛い。頭がガンガンする。



目覚めは最悪だった。
頭が痛い。
体がだるい。
喉が痛い。


・・・今日は何曜日だっけ。


はまだぼうっとしたまま考えた。
もし平日だったら、学校休ませてもらおうか。


「お母さ・・ん・・・・」

モゾモゾと、布団から這い出そうと、手を突いて上半身を起こす。
学校を休ませて。
そう続けようとしたが、それは口からは出なかった。




「・・・・・・・・?」





・・・・・・おかしい。




どこだ。此処は。








まず、部屋全体の色が少しオレンジがかってきていて、朝ではなく、もう夕方だということが解る。
しかしだ。もっと気になることが。

起きた所は自分の部屋じゃなかった。
何なんだ、一体。

自分の部屋よりもはるかに広い部屋。
自分の部屋よりもはるかに綺麗な部屋。
自分の部屋よりも何か雰囲気があっていい感じの部屋
自分の部屋よりも・・・・・やめておこう。虚しくなってきた。



「うー・・・ん」



とりあえず、人だ。

人を探さねば。


動かない頭をフル回転させて出てきた答えがコレだ。
他に案はない。思いたったが即行動。は部屋を出てみることにした。

重たい身体を引きずって、布団から出る。





と。






ズベシャ!!!!!!






「うぇえ!?」




は布団が一段高くなって、ベッドの様になっていることに気がつかなかった。
――――結果、鼻から転げた。


「いったぁー!」


鼻を押さえてもんどりかえる。
コレは痛い。さすがに痛い。

元々高くない鼻がさらにぺちゃんこになる!!


「鼻血出てないかなぁ。」


しばらく蹲っていただったが、
鼻を押さえてやっとこさ立ち上がった。
そして部屋を出ようと扉に目をやった時。



「どうしました!?」



一人の青年が扉から顔を覗かせた。



・・・・もちろん知らない人、だ。












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ぎゃーーーーーー!
やっちゃいました。ついに手を出してしまいました。
トリップ夢小説・・・・。
見るのは大好きだけれど、文章にするとなると大変ですね;
そして、恥ずかしい。
一応10000HIT記念物ですので、楽しんでいただけると幸いでございます。

さて、これからどうなることやら・・・。


08.04.15